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目が覚めると、汗でびっしょりになっていた。
心臓が自分とは別の意思を持った生き物みたいに、体の中心で派手に暴れている。
呼吸がうまくできない。
おまけに喉もひどく渇いている。
やれやれ、いったい何年振りだろう。
こんな夢を見たのは。
それは、小さい頃によく見た種類の夢だった。
夢の中の僕は当時の年齢、つまり六歳ぐらいの子どもだった。
そして、その夜、僕は一人で留守番をしていた。
体の小さかった僕にとって、その日の家はいつも以上に広く、妙によそよそしく見えた。
気をまぎらわせるためにも、僕は遅くまでテレビを見ていた。
それがどんな内容だったかは全く覚えていないが、とにかく画面の中には古い時代の心温まる一コマが映し出されていた。
そして、いつしか僕はテレビをつけたまま眠りに落ちていた。
ふと目が覚めたとき、何かが変わっていることに気が付いた。
家の中の空気がひどく重く感じられた。
さっきまで楽し気な光景を映していたテレビも、今は赤と黄色と緑の縞模様しか映っていない。
このまま再び眠ってしまえれば良かったのだ。
しかし、頭は妙にはっきりしていて、とても眠れそうになかった。
あきらめて、しばらく画面に映る単調な映像をぼーっと眺めていた。
すると、突然チャイムが鳴り響く。
それは普段聞き慣れたものとは違い、いやに攻撃的な響きをはらんでいた。
慌ててテレビを消し、じっと息を殺して耳をすました。
沈黙に誇張された時計の針の音が、チッチッチッと頭の奥に突き刺さる。
針を見ると三時を少し回ったところ。
「こんな時間に鳴るはずがない、
気のせいだったんだ」
そう自分にいい聞かせていると、
もう一度、
さっきよりも大きくはっきりした音でチャイムが鳴った。
嫌だった。
行きたくなかった。
取り返しのつかないことが起きるのはわかっていた。
でも、足は自然と玄関に向かって動いていた。
気がつくと、僕はドアの前に立っていた。
一枚のドアを挟み、その向こう側にはあいつがいるのがはっきりわかった。
「だれですか?」
勝手に喉から出た音は、無防備で容易に壊れてしまいそうな音だった。
しばらく間があった。
その間がさらに僕を不安にさせた。
そして、ドアの向こうから
ゆっくりと穏やかな声がした。
「ただいま。
今、帰ったよ。
ドアを開けてくれないか」
それは予想に反して、父親の声だった。
でも、僕にはわかっていた。
そこにいるのが偽物だってことが。
だけど、そんな気持とは裏腹に僕は鍵を回していた。
カチッ、
ドアはゆっくりと開いた。
広い家の中で、僕はひどく孤独だった
そこには僕以外に誰もいなかった
きっと、この家にはもう誰も帰ってこないのだろう
みんな僕を見捨てて、どこか遠くに行ってしまった
僕はもうすぐ、ドアの向こう側にいるきちがいのナイフでめちゃくちゃに刺されて死ぬ
でも、そんなことはどうでもいい
とにかく、もうこの家には誰もいない
誰かがやってくることも二度とない
土屋
心臓が自分とは別の意思を持った生き物みたいに、体の中心で派手に暴れている。
呼吸がうまくできない。
おまけに喉もひどく渇いている。
やれやれ、いったい何年振りだろう。
こんな夢を見たのは。
それは、小さい頃によく見た種類の夢だった。
夢の中の僕は当時の年齢、つまり六歳ぐらいの子どもだった。
そして、その夜、僕は一人で留守番をしていた。
体の小さかった僕にとって、その日の家はいつも以上に広く、妙によそよそしく見えた。
気をまぎらわせるためにも、僕は遅くまでテレビを見ていた。
それがどんな内容だったかは全く覚えていないが、とにかく画面の中には古い時代の心温まる一コマが映し出されていた。
そして、いつしか僕はテレビをつけたまま眠りに落ちていた。
ふと目が覚めたとき、何かが変わっていることに気が付いた。
家の中の空気がひどく重く感じられた。
さっきまで楽し気な光景を映していたテレビも、今は赤と黄色と緑の縞模様しか映っていない。
このまま再び眠ってしまえれば良かったのだ。
しかし、頭は妙にはっきりしていて、とても眠れそうになかった。
あきらめて、しばらく画面に映る単調な映像をぼーっと眺めていた。
すると、突然チャイムが鳴り響く。
それは普段聞き慣れたものとは違い、いやに攻撃的な響きをはらんでいた。
慌ててテレビを消し、じっと息を殺して耳をすました。
沈黙に誇張された時計の針の音が、チッチッチッと頭の奥に突き刺さる。
針を見ると三時を少し回ったところ。
「こんな時間に鳴るはずがない、
気のせいだったんだ」
そう自分にいい聞かせていると、
もう一度、
さっきよりも大きくはっきりした音でチャイムが鳴った。
嫌だった。
行きたくなかった。
取り返しのつかないことが起きるのはわかっていた。
でも、足は自然と玄関に向かって動いていた。
気がつくと、僕はドアの前に立っていた。
一枚のドアを挟み、その向こう側にはあいつがいるのがはっきりわかった。
「だれですか?」
勝手に喉から出た音は、無防備で容易に壊れてしまいそうな音だった。
しばらく間があった。
その間がさらに僕を不安にさせた。
そして、ドアの向こうから
ゆっくりと穏やかな声がした。
「ただいま。
今、帰ったよ。
ドアを開けてくれないか」
それは予想に反して、父親の声だった。
でも、僕にはわかっていた。
そこにいるのが偽物だってことが。
だけど、そんな気持とは裏腹に僕は鍵を回していた。
カチッ、
ドアはゆっくりと開いた。
広い家の中で、僕はひどく孤独だった
そこには僕以外に誰もいなかった
きっと、この家にはもう誰も帰ってこないのだろう
みんな僕を見捨てて、どこか遠くに行ってしまった
僕はもうすぐ、ドアの向こう側にいるきちがいのナイフでめちゃくちゃに刺されて死ぬ
でも、そんなことはどうでもいい
とにかく、もうこの家には誰もいない
誰かがやってくることも二度とない
土屋
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